第3章 健全な精神は健全な肉体に宿りかし
そんな事を考えていると、彼女が歩いている方向から話し声が聞こえた。
暗いのでよくは分からないが、車の中に二人の影が見える。
親しそうな男女のカップルのようだ。
二人の顔の影が重なる。
何もこんなとこで。
澤子は赤くなりながらさっさとそこを通り過ぎようとした。
晋、やだ、見られちゃう。
そんな女性のはしゃぐ声が聞こえて思わず車内を見やると今日会っていた三木の横顔だった。
低い三木の声は聞き取れなかったが、ゆっくり振り返った彼と澤子の目が合った。
彼は澤子にいつも向けている優しい表情ではなく、男の顔をしていた。
身体がぎくりと反応し、澤子は慌ててその場を離れ脚を庇いながら早足で家に向かう。
──怖い