第14章 余章 ―― 夜話
私、志麻 遥の父親はジャーナリストで滅多に家には居ない。
まだ大学生だし、特に生活に困っているという事も無かったが週に三度アルバイトをしている。
「遥ちゃん、これ一番テーブルに」
「はあい」
バーという程でもないが、ちょっとしたカクテルや軽食を出す飲み屋。
続けてる理由はマスターと気が合って働きやすいのもあるが、色んな人間が見れるから。
酒が入ると本性が出ると人は言うけど、生の人間程面白いものはない。
そしてまたこの客、嫁の愚痴を言ってる。
「奥さん妊娠中なんだろ? もう少し労わってあげたら?」
「そうなんだけどさあ……なんかアイツ性格変わっちゃって怪獣みたいでさ」
「遥ちゃんみたい子が慰めてくれると嬉しいんだけど」
男がちら、と私の胸元を見る。
キモ。
『あんたは穴がありゃ誰でもいいんだろう』
流石に客なんでそこまでは言えない。
「私は高いよ」
「えー、そんな、遥ちゃーん」
クスクスと笑っている声の方向を見るとカウンターに座っている男がこちらを見ていた。
「お客さんここ初めて?」
「ぶ、何、そのフーゾクみたいな台詞」
「…………」
言われてみれば。
行ったことないけど。
「はは。 確かに」
「ところでさっきの話、本当?」
「は?」
「君は買うといくらするの?」
「………?」
なんだこいつ。