第14章 余章 ―― 夜話
「私にも、して」
「は?」
「あの人にしたのと同じ事して」
「やだよ」
「澤子は澤子だし、そんなの一緒にしたくない。 それとも俺と、寝ただけって言う様な関係になりたい?」
「違う…そうじゃない」
「昔のいざこざでどうこうは少し違うんじゃないの」
「だって……寂しい、もの」
澤子がまたポロポロと泣き出した。
「ちょ、澤子」
「う………」
「泣くなって」
瑞稀は焦った様子で澤子をなだめようとしている。
「澤子に泣かれると困る」
瑞稀さんは悪くない。
困らせたくない。
でも止まらない。
「ごめん、泣くな」
顔を両手で覆っている澤子の手首をそっと掴む。
ごめんなさい、そう言いたいけど言葉にならない。
「……結婚まで待つつもりだった」
瑞稀は澤子の身体を柔らかく押し倒して、頬の涙を舐め取った。
「澤子の全部、俺で埋めてあげるから」
言葉で埋められないもの。
溢れて人はこうするんだろう。
澤子は瑞稀の首に腕を回す。
「……嫌わないで」
「嫌わない。 好きだ」