第14章 余章 ―― 夜話
三人で映画でも見に行こう、そういう話になって本日瑞稀、澤子、逸巳は外へ出掛けている。
「逸巳、今日デートだったんじゃないの?」
「んー、なんか急に向こうの都合が悪くなって」
最近、逸巳に彼女が出来た。
しかし押しが弱いというか優し過ぎる性格の逸巳も、以前の澤子と同じく付き合いが続かない事が多かった。
向こうから告白してきて『崎元君っていい人なんだけど……』とか訳が分からない。
そんな事をぼやく逸巳を澤子は心配そうに、瑞稀は生暖かい目で見ている。
「まだ少し時間あるし、私ちょっと服見て来ていいかな?」
「うん」
「どうぞ」
澤子が店に入っていき、二人は外で待つ。
「……逸巳、今度飲みに行くか」
「そうだね……」
「──瑞稀くん?」
なんだか懐かしい声がして瑞稀が振り向くと、小柄な女性が驚いた様子でこちらに駆けてきた。
「美和……」
「誰? あの可愛い人」
「……知り合い?」
「何で疑問形?」
「元気だった!?」
「まあな」
美和が逸巳に気付きじっと見て、思わず逸巳はどきっとした。
この人、なんか目の力が凄いな。
「こんにちは、私美和っていいます」
「こ、こんにちは。 あの、瑞稀さんとは?」
「んー、なんだろ? 強いて言うなら元カノ? ……て、程でも無いけど!」
美和がけらけら笑いながらバンバンと瑞稀の背中を叩く。
「いて、……ったく、相変わらずだなお前」
「んふふ。 でも私も今、良い人がいるんだよ」
「そっか」
逸巳はそんな二人の様子を見ている。
あれ? なんか、入り込めないな……