第13章 Mirror
瑞稀の訃報を高雄に伝えたが、彼は葬儀には顔を出さなかった。
逸巳は高雄の書斎を訪ねた。
「少なくとも瑞稀はもっと他の道があった。 一樹の事はどうなる」
「僕が責任を持って育てます」
「そういう事を言ってるんじゃない」
後ろ姿の高雄の肩が震えている。
「……私を生き汚い人間だと思うか」
「……いえ」
「墓を美しく飾って何になる? 儚く生きてそれが美談に、なったとて………」
逸巳は何も言わずに高雄の部屋を後にした。
すべからく誰かの命の元に人は生きている。
物理的に喰おうが喰わまいが。
高雄を肯定はしないが、逸巳は否定もしなかった。
ただ、自分は瑞稀のようには出来なかっただろう。
複雑に入り組んだ鏡のように、瑞稀と澤子は出会い、瑞稀と逸巳は出会い、お互いの姿を映しながらそれらは繋がっていく。
新しい生命が生まれ、そして消え、永遠にそれは続くのだ。