第12章 春へ
暖かい季節になり、澤子は逸巳と瑞稀の家を訪ねる事になった。
玄関先で瑞稀は二人を迎える。
「でかい家。……て、なんで、僕も?」
「澤子と婚約するから?」
「はあ!?」
当然というように瑞稀は言い、隣で赤くなっている澤子。
よく見ると左手の薬指には指輪。
いつの間に。
「瑞稀さんって行動力あるって思ってたけど、何、まだ付き合って4ヶ月……」
「何かおかしいか?」
「……ちょっと」
逸巳は瑞稀を澤子から少し離れた庭に連れ出した。
「学校はどうすんの?」
「続けるけど」
「式は?」
「大学卒業したら?」
「姉さんこんな家に入るの?」
「俺は継がないから無いんじゃないの」
「てか、まだ寝てもないよね二人」
「なんで童貞の癖に分かんの?」
「なんでそれ知ってんの?」
「俺はアレだ、映画のエンドロール観ないタイプ」
「わかる、僕も」
何となく話がついて、二人は澤子の元に戻った。
「お二人方、ようこそいらっしゃいました。 本日はお庭にお食事をご用意しております」
ワズは澤子と逸巳に深々とお辞儀をした。
「お久しぶりです、ワズさん」
「澤子様、その節は大変失礼を致しました」
「……様とか止めてください」