第12章 春へ
「澤子、来て」
「なあに?」
傍に座ると瑞稀は澤子の身体をやんわり押し倒した。
「え?」
「足りない」
「なんでこんな体勢?」
「雰囲気?」
「そん、ん……」
「……力抜いて澤子」
あ、また。
熱い。
「んん………」
合わせた唇の隙間から瑞稀の舌が押し入ってくる。
抗おうと思っても力が入らない。
絡め取られて吸われる。
何、これ……?
「ん、…んっ……は、ふ」
息苦しくて避けようとすると、顎を上に向かされた。
「息していいから」
「ん、、ふ、ん……」
「いいな、これ」
「な、に……んゃ、!」
澤子の身体がびくっ、と激しい反応をして瑞稀が口を離した。
「ご馳走様」
「は……」
瑞稀がちゅ、と澤子の頬に口付ける。
「嘘つき……」
「ついてない。 キスしかしてない」
「これ、キスじゃない……」
「はは」
澤子は寝転がった瑞稀の肩に頭を乗せた。
瑞稀の指が澤子の髪を梳く。
「ん……っ」
「まだ辛い?」
「んん、昨日より、は」
「そっか、良かった」
「なんで差があるの?」
「……まあ、軽くでもいくとマシになるっぽい」
「いく?」
「そのうち分かる」
「??」