第11章 感情は航海の帆を張る
目が覚めると、白い天井が見えた。
ここはどこだろう?
暫くぼんやりとし、喉の渇きを覚えて周囲を見渡した。
病院だろうか。
「姉さん!」
慌てた様子で澤子を覗き込む逸巳が視界に飛び込んできた。
逸巳が澤子の手を握る。
澤子の腕には白い包帯が巻かれていた。
「何やってんだ。 瑞稀さんから連絡もらって……気が気じゃ無かった」
「……大袈裟ね」
「嫌だよ、……もうここで目を覚ます姉さんを待つのは」
そういえばあの時もこうやって逸巳が居た。
小学生だった逸巳は涙でぐしゃぐしゃの顔をしてなかなか澤子の傍から離れなかった。
「ごめんね……」