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Mirror【R18】

第11章 感情は航海の帆を張る


「澤子」

瑞稀が名前を呼ぶが、気を失っているようだ。

澤子の腕から新しく盛り上がり滴る血液。
浅い呼吸を繰り返している。

直接入った体液の刺激が強かったのか血を流し過ぎたのか。
切ったのは動脈だろう、神経までは深くないようだがどうか。


…とにかく早く澤子を病院に連れて行かないと。

その時の瑞稀に『欲』は無かった。
自分の上着を脱いで澤子の二の腕に巻き、きつく縛る。

澤子を運ぼうと抱き上げようとした時、筋肉の落ちた細い左脚からは大きな裂傷の跡が覗いていた。


「……今までどれだけ傷付いたんだ」


重みのある暖かい体。


──今自分が手を振りほどくと澤子は崩れてしまうのだろうか。

「……っ」

閉じた目と額に唇を強く押し付けただこれを守りたいと思った。


離したくないのは俺だ。





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