第9章 対話、それぞれの都合
「ただいま……」
逸巳は家に戻ると澤子はぼぉっとした様子でダイニングに座っていた。
澤子と付き合わないと瑞稀は言った。
澤子は居なくならない。
そしたら、ずっとこれからも澤子と一緒にいられるのだろうか。
「あ、お帰りなさい」
澤子は逸巳に気付き、慌てて笑顔を向けた。
暫くの間瑞稀が家に来なくなっていた時も、澤子はぼんやりしたり塞ぎ込む事が多くなっていた。
───ずっと一緒に。
だけど、こんなのは姉さんの幸せじゃない。
逸巳は自嘲したような表情の瑞稀を思い返す。
瑞稀さん、あんたは何を考えてるんだ?