第9章 対話、それぞれの都合
「姉さん、ベランダにいるの?」
「あ、逸巳、上がったの。 お風呂」
逸巳が廊下で声を掛けると室内に顔を出した澤子が答えた。
顔が赤い。
「じゃ、遅いし俺もう帰るわ」
澤子の後からベランダから出てきた瑞稀は帰り際、澤子に声を掛けた。
「来週時間空けといてくれる?」
澤子は黙って頷いた。
「あ、僕も駅前に用事あるんで途中まで一緒に行きます」
廊下で聞こえた声。
人がどうとか言っていたけど、何の話だったんだろう。
だが、逸巳は二人の間に何かあった事は何となく分かっていた。