第15章 衝突
土曜日、午前6時。
平日と変わらず、日課となっているランニングへ出かけようとしていた爆豪と、早々にランニングを終えてきたが玄関で鉢合わせた。
『おはよう、爆豪くん』
は靴を脱ぎながら、彼に挨拶を投げかけた。
寝起きの彼は、一切言葉を返さないまま。
無言で玄関から出ていった。
朝の挨拶を無視され続けて、もう少しで三週間が経過する。
つまりは。
(…出会った次の日の朝から鉢合わせし続けて、未だに挨拶してもらえない)
毎日毎日。
お互い、一日の始まりに顔を合わせるクラスメートであることは、違いないはずなのに。
仲良くしようという気概というものが、爆豪からは一切読み取れない。
まぁいいか、といつものように考えを放棄し、は湯を沸かす為、キッチンに立った。
寝不足のためうとうととしながら、ゆったりとした時間を過ごしていると。
「おいコラ、沸いてんぞ」
『……ん』
立ったまま寝ていたらしい。
は誰かに声をかけられ、ハッと目を覚まして、慌ててコンロにかけていた細口ケトルの火を消した。
『………爆豪くん、ジョギング終わるの早いね』
「あ?てめェが火にかけすぎなンだよ。何分突っ立ったまま寝てやがった」
『え?今はなん…じ………はっ、寝てた』
ようやく彼女がコーヒーをセットし始めた。
そんな彼女の様子を眺めていた爆豪は、水をマグカップに注いで一気飲みすると、空になった自身のマグカップを、彼女のマグカップの隣に置いた。
『……ん?』
よこせや、という一言を発して、爆豪がまた押し黙り、彼女専用のコーヒー棚を漁り始めた。
その中から、彼はドリップコーヒーの袋を一つ取り、彼女の目の前にそれを放り投げた。
『食べ物を投げるのは良くない』
はそう言って、飛んできたドリップコーヒーの袋を、ハエ叩きのように躊躇いなく叩き落とした。
「ヒトの事言えねェじゃねぇかくたばれ」
暴言を吐かれても、何やら満足げな彼女は、ドリップコーヒーがセットされた二つのマグカップに細口ケトルを傾けた。
キッチンカウンターで佇んで、コーヒーに砂糖を入れようとしていると、それを妨害している爆豪の姿を見つけて。
早起きしてきた轟が、挨拶するタイミングを失った。