第1章 【加州清光】赤い椿
本丸に梅雨の時期が訪れた。
ジメジメした湿気が重たるい。
この季節になると、主は低血圧のせいで中々起きてこない。
加州「主〜。そろそろ起きなよ」
「んー。」
目をこすりながら、ムクっと起き上がるものの目は開いていない。
加州「もしもしー?目開いてくださーい?」
俺は、主の前にしゃがんで呼びかける。
「加州清光。」
主は、静かに目を開けた。
あまりにも眠そうな顔をしているので、思わずブッと笑ってしまった。
加州「は、はい。」
「私はまだ寝ます。理由は眠いからです。朝餉はいりません。以上!!」
主はそのまま、また布団に倒れ込んだ。
加州「ちょっとー!朝餉は食べなきゃダメでしょー。もう9時過ぎてるんだから起きなって」
俺は、主に馬乗りになり必死に起こそうと試みた。
「睡眠妨害反対!」
加州「主、いい加減に、」
刹那、主は俺の腕をとるとそのまま布団に引きずりこんだ。
「清光〜丁度いい抱き枕だよ。このままでいて?」
主は、ふにゃっと笑うと俺の胸板に顔を埋めた。
本当にずるい人だ。
…わかってるくせに。
雨の音がやけに大きくなった。
多分俺の気の所為。