第6章 鬼の出発
町に下りて来たはいいが、何処に向かえばいいかが、さっぱり分からない。
「あ・・・、電話・・・」
・・・・。
唐突に思い出した事に、体が固まる。
ゆっくりと震える手で携帯を取り出す。
冷や汗を拭い、慎重に番号のついたボタンを押していく。
繋がった電話に耳を当てる。
「あ、の・・・鄙鬼です。繋がってますか・・・?」
[・・・。今まで何をしていたんですか]
電話の向こうから聞こえてきた低い声に、思わず緊張で電話を握り潰してしまいそうな程、力が入る。
「え、あ・・・。穴に入ったら森に居まして、そこで会った人間に”念”というモノが出来ないと、やっていけないと言われまして、その、修行を・・・。」
[それで、報告を忘れたと?]
「す、すいません」
[・・・はぁ、もういいです。鄙鬼のソレは今に始まった事じゃ、ありませんから。しかし、いつもの仕事と、今の仕事じゃ訳が違いますから、報告ぐらいはきちっとしなさい。]
最初より幾分か柔らかくなった声に、緊張が解れる。
[それで、今の状況は?]
「あ、はい。今は、先程言った人間に紹介された場所に行こうかと。そこでは”ハンターライセンス”というのが取れるそうです。ソレを取れば、一般市民じゃ入れない所に入れるため、探せる範囲が広がるかと・・・」
[そうですか。分かりました。それじゃあ、これからも仕事に励みなさい。報告も忘れずに・・・、心配、しますから。それでは]
プツッと切れた電話を眺める。
心配して下さったのか・・・。
何となく、得をした気分だ。
まさか、あの鬼灯様が心配して下さるなんて・・・。
「さて、まずは情報収集からかな」