第5章 鬼の能力
カイト視点
鄙鬼さんが俺の頭をゆっくりと優しく撫でる。
思わず目を見開くが、バレなかったようだ。
鬼と言っても温かいそれは、俺にとってはとても心地の良いものだった。
頭を撫でられただけで喜ぶなんて、そう思うと少し恥ずかしい・・・。
チラリと鄙鬼さんを見上げると、眉を寄せて此方を見ていた。
「・・・。」
もしかしたら・・・。
普段冷たい鄙鬼さんも、存外優しい人・・・否、鬼なのかもしれない。
離れていった手を眺めながら思う。
あの感触を忘れないように、そろりと自分の手を頭に持っていく。
鄙鬼さんと違いゴツゴツした俺の手は、まるで火に包まれたように熱い。
忘れるな、というように鄙鬼さんへの気持ちは膨らんでいくばっかりだ。
あの人の気持ちが俺に向けば、温かい華奢な手も、柔らかい綺麗な髪も、輝く黒曜石のような瞳も、全部俺のものなのに・・・。
ハンター試験に行けば良いだなんて、あんなの嘘に決まってる。
本当は、何処にも行って欲しくなくて、俺の傍にずっと居て欲しくて・・・。
でもきっと、そんな事を言ったって、ずっと一緒に居てくれる筈もない。
ジンさんも無理矢理笑顔を作って、悲しくない振りをする。
貴方は、まるで麻薬のようだ。
一回手を出せば、それに溺れて止められなくなる。
どっぷり嵌ってしまった俺達は、もう抜け出せない・・・。
唯一俺達に出来る事は、貴方の愛を探し、求める事だけだろう。
だから・・・、覚悟しといて下さい。
愛に飢えた男は、獰猛で、獣のように、一心不乱で貴方を追いかけ、噛み砕いてしまうでしょう。
もちろん俺も、その一人です。
おまけ END