第8章 理想の女性
「お前は俺の理想を満たしていない」
そう彼に告げられたのは、彼と付き合って少し経った頃だった。
彼―――国木田独歩は理想が高く、付き合っている私もそんな彼の理想に沿えるように努力してきた。
でも、いきなりこんなことを言われるなんて。
「―――もっと努力しなきゃ駄目だよね。」
前向きに思い直して、私は今迄以上に頑張った。
数ヶ月後、久々に彼と待ち合わせをし、自身の努力を認めてもらおうとした。
「独歩…どうかな、理想の女性になれたかな」
「駄目だ…矢張り俺がお前を理想に近づけないと」
え、と言う前に、彼は私の肩を掴んだ。
「きゃっ!!」
「俺は、目が二重、それと、明るく前向きな性格…礼儀がなっている…それから…」
「ち、ちょっと待って!二重はどうやって直すの!?」
「任せろ…お前を一からやり直させて、性格も全て変えてやる。」
「い、嫌だ、嫌だあああ!!!」
彼に近づいてしまったことを後悔している私に、彼はこう言ってきた。
「俺の理想に近づきたいんだろう?ならいいじゃないか」