第6章 呪われし美姫と 英明な従者
彼女は、荷物を手早く纏め。灰色のフード付きローブを羽織った。
そしてフードを深くかぶって裏門から足早に城外へ。
すると手筈通り、1台の馬車が出迎えた。
馬車の前には、彼女と同じような格好の男が3人立っている。
真ん中に立つ、1番背の低い男がこちらに手を差し出す。
「…お待ちしておりました。
貴女のお名前を、お聞かせ願えますか?」
その気品ある声の主の顔は見えなかったが、フードから少し赤い髪が覗いていた。
『私の名前は…ローズ。
これから、よろしくお願いします』
そう。彼女はもうオーロラではない。
新しい名を名乗った彼女の声色からは、確固たる覚悟がしかと見えた。
ローズを迎えてくれたのは勿論、リドル、デュース、トレイのハーツラビュル3人組だ。
御者をしてくれているトレイを除いた3人は、馬車内で暑苦しいフードを脱いだ。
『ふぅ…。リドル、デュースも…なんだか大変な事に巻き込んでごめんなさい。
とても助かるのだけど、ハーツラビュル国は大丈夫?』
リドルの身分を考えると、彼女の厄介事に付き合っていられるとは思えない。
なんといっても彼は一国の王子なのだから。
「そんな事、ローズは気にしなくても良いんだよ。
…と言いたいところだけど、実はその通りでね。君につきっきりとはいかないのが現実だ。
でも。絶対に君を守り抜くと約束したからね。
ボクとデュース、トレイの3人が交代で君のナイトを務める。
君を1人きりには、絶対にさせないから」
隣に座るデュースも、リドルの言葉に頷く。
「僕も、ローズを守る為に出来る限りの事をするつもりだ。
例えどんな奴が攻めて来たって、僕がまとめてやつけてやるからな!」
不安げなローズを、デュースは安心させるようにガッツポーズを見せる。
『デュース…ありがとう』
彼女はそんな彼の振る舞いに、たしかに勇気をもらった。
これから始まる自分の新生活に、若干の不安を残しつつ。
4人を乗せた馬車はガタゴトと進むのだった。