第6章 呪われし美姫と 英明な従者
リドル達に連れられ、両親の前に現れたオーロラ。
父は眉根をきつく寄せ、母は泣いていた。
立ち尽くしたフィリップは、怒りか悲しみかで拳を震わせていた。
そんな雰囲気の中、気を使ってくれたのかリドル達3人はいつのまにか退室していた。
オーロラが何と言って良いか迷っている間に、ステファンが口を開いた。
「…さきほど、会議で決めた事がある。
お前を救う為に、皆で知恵を出し合ったのだ。
辛いかもしれないが…どうか聞いて欲しい」
今まで見た事がないくらいに緊張した面持ちの父親の顔に、なんとなくオーロラは察した。
これから告げられる事は、自分には決定権が無く。ただ従う道しか用意されていないのだと。
「お前は、16歳になるその時までこの城から離れて暮らすのだ」
『え…』
彼女からしてみれば、降って湧いたような話だ。
これは、先ほどの会議でリドルが提示した案に他ならない。
さすがにショックを隠せないオーロラだったが、ステファンは続ける。
「同盟国であるハーツラビュルの3人と共に、身を隠して暮らすのだ。
彼等は約束してくれた。必ず糸車の呪いから守り、無事に16になったお前をここに連れ帰ると」
まだ10歳である彼女が、親元を離れて知らない土地で暮らす。それは言葉では表せないくらい酷な事だろう。
しかしオーロラは理解していた。
皆んな、彼女を守る為にこの決断をしてくれた事を。
父や母、フィリップ。誰1人として本心では、彼女と離れたくなどない事を。
だから、オーロラは泣かない。ぐっと上を向いて涙を飲んだ。
そして声が震えないように気を付けながら、言葉を選ぶ。
『…お父様、お母様、フィリップ…。
私は、きっと無事に16歳になって、ここへ帰って来ます。
それまで、待っていて下さい…。どうか、お元気で…』