第6章 呪われし美姫と 英明な従者
城に隕石でも直撃したのかと疑うくらいの揺れ。
鼓膜が破れてしまうのではないかと思うくらいの轟音。
キラキラと輝くステンドグラスを一瞬で粉々にしてしまうほどの突風。
オーロラはおもわず耳を塞ぎ、目をキツく閉じた。
「…っ、」
フロイドは咄嗟にオーロラの小さな体を庇い、自分の身を呈して包み込んだ。
彼の小さな呻き声に、彼女はゆっくりと目を開く。
すると、目の前には自分を庇ったばかりに傷付いたフロイドの姿があった。
彼の背中にはいくつものガラス片が突き刺さり。
美しいジャケットを血に染めていた。
『フロイド!貴方、怪我をっ』
ぐらり。
突然、地面がなくなってしまったような感覚に襲われるオーロラ。
それはあながち間違いではない。
城からせり出したテラスは、さきほどの衝撃で
自重を支えられなくなり、その場所ごと落下を始めようとしていたのだ。
オーロラは覚悟した。このままテラスと共に落下して
地面に叩きつけられる事を。
しかし咄嗟に反応したフロイドは、オーロラを乱暴に横抱きすると
なんと落下中のテラスを思い切り蹴り、跳躍した。
そしてなんとか、城内へと飛び込む事に成功した。
呆然とするオーロラに、冷たく言い放つ。
「あーあ。間に合わなかった。
お前、絶対に後悔すっからね。
あの時どうして、オレに “ 一緒に逃げて ”って
泣いて縋らなかったんだろう?って」
その話し口調は、いつもの彼らしくない乱暴なもので。
驚いた彼女は、すぐさま顔を上げたが
そこにもうフロイドはいなかった。