第5章 ユニークなトランプ達は踊る
たくさん踊ったオーロラは、1人テラスへと足を運んでいた。
重いドレスを着込んでの連続ダンスは、やはり体力を消費する。
休憩がてら風にあたりに来たのだ。
ステンドグラスで出来たカラフルな窓を通り抜け、ホールからせり出た広いテラスに出る。
すると彼女を心地良い風が包んだ。うっすらかいていた汗も引いていく心地がした。
すると、そんな彼女に近付いて行く1人の男。
「お姫様、もしかしてお疲れぇ?」
フロイドだった。
『!』
図らずとも、彼女は身構えた。
そんなオーロラの気持ちを知ってか知らずか、勝手に彼は続けた。
「今日のドレスより、オレ前の奴の方が好き〜」
フロイドが言う前の奴、とは。
彼とオーロラが初めて出会った時に着ていた 青のマーメイドスタイルのドレスの事を指していた。
「あれを着たお姫様、本物の人魚みたいだったから」
『…まるで、本物の人魚を見た事があるみたいに言うのね』
「………アハッ」
冗談で言ったつもりのオーロラに、フロイドは違和感のある間で笑ってみせた。
相変わらず、人を食ったような態度の彼だったが
気まぐれなフロイドに耐性が付いてきたオーロラ。
もう彼が何を言っても何をしても、簡単に驚いてやるものか。オーロラは自分の中で、勝手に決まり事を作っていた。
しかし、オーロラはすぐにまた彼に驚かされてしまう事になる。
急に自分の前にフロイドが跪いたのだ。
『フロイド!?』
驚くオーロラの手を取り、その手の甲に軽く口付けを落とす。
「お姫様、オレと踊ってもらえますか?」
彼の口から飛び出した言葉に、目を白黒させるオーロラ。
まだイエスともノーとも言っていないのに、フロイドは立ち上がって
勝手にオーロラの腰を自分の方に寄せる。
唐突に始まるダンス。
フロイドの踏むステップに、彼女は無意識に合わせてしまったのだ。
その後は、流れるように2人は手を取り合った。