第4章 運命に引き寄せられた出会い
「…トレイさん。僕、あいつ見てたらイライラするんですけど」
「同感だ。だがやめとけ。聞こえたら終わる。
ほら、笑っとけ笑っとけ」
嫌悪感を隠しもしないデュース。そして、あからさまな作り笑いを顔に貼り付けたトレイ。
「っていうか、皆んなお前を探してたぜ。こんなとこで遊んでねーで早く戻れ」
『!!もうそんな時間?』
フィリップの言葉に、飛び上がるみたいに驚いたオーロラ。
パーティーまでに終えなければならない支度は山ほどある。
早く城へ戻らなければ。とやっとの事で我に返った彼女。
「ほら行くぞ、俺も一緒に……」
突然、ある一点を見つめて固まるフィリップ。
4人は、その視線の先を辿る。
…そこには、例に違わず塗りかけの薔薇が。
「こ、これは、違うんだ!えっとだな!、えっと…」
「いやデュース、言い逃れは無理だと思うぞ。
…ん?なんかデジャヴだな。これ」
「…ボクが」
リドルが名乗り出ようとした瞬間、オーロラが声を張り上げた。
『わ、私が塗ったの!!』
「はぁ?なんで!」
『……』
突然自分がやったと言い出したオーロラ。3人は、突如始まったフィリップと彼女のやり取りを、とりあえず見守る。
『…っ、白い薔薇を見たら、赤く塗りたくなる…病気っていうか…』
「なにその病気。超ヤバすぎ」こえー。ひくわ
リドルが暴れ出すのではないかと本気で心配になるデュースとトレイは、いつそうなっても止められるように身構えたのだが。
それは杞憂に終わった。
「いや今はそんな事はいいわ。ほらもう行くぞ」
フィリップは、オーロラの腕を掴んで歩き出す。
急に引っ張られてふらついた彼女だったが、やがてフィリップの歩幅に合わせて歩き出す。
『リドル!トレイ!デュース!また後で!
雛を助けてくれて、ありがとう』
彼女はそう言い残して、ついに3人の前から姿を消した。
「「「……名前」」」
結局、彼等は最後までオーロラの名を知る事は出来なかった。