第26章 眠り姫の物語
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この場にいる全ての人が、ローズが姿を現わすのを、今か今かと待ち望んでいた。
きっと綺麗な女性に育っていらっしゃるに違いない。花のように美しいお姿を早くこの目で見たい。そこかしこで、似たような内容の言葉が囁かれている。
そんな声を拾ってニヤニヤしているのはオクタヴィネルの3人だ。
「ま、お姫様が可愛いのは間違いねぇけど」
「本当にローズさんは、皆さんに愛されているのですね」
「そのようですねぇ。皆さん、幸せそうな顔をしている。
…果たして、これからここで起こる出来事の後でも、同じように笑っていられるでしょうかね」
眼鏡の奥で、その瞳が愉快そうに歪められた。
そんな具合に群衆は 待ち切れないといった様子だが、中でもそれが顕著なのは両親である。
重厚なレッドカーペットの上に傅いたリドル。そんな彼を玉座から目を細めて見つめている、国王ステファンと 王妃リア。
リドルから、ローズが間もなくこの場に現れると聞かされ、2人は喜びを隠す事なく露わにした。そして、自分達の娘を長きに渡り守ってくれた恩人に御礼の意を伝える。
しかし、その恩人は気まずそうに俯いた。
“ まだ伝えなければ ならない事があります ” と、顔に書いてあるようだ。
そんなリドルの様子を受け、ステファンはすぐにでも “ どうしたのか? ” と口にしようとしたのだが。それを隣いた男が遮った。
その男の名は、ヒューバート。フィリップの父にして、アズールの主君。名実ともにオクタヴィネルを束ねる国王である。
立派で大きな腹を揺すりながら、リドルの方へと躍り出る。そして、難しい顔をしている彼の背をバシバシと叩いた。
「何をこんなにも めでたい日に、しけた顔をしておるんだ!ええ? 同盟国の王子として、姫の無事を 笑って祝ってやらんか!なぁ!
そうだ!なんなら この流れで、我が息子フィリップと姫の披露宴をやってしまっても良いな!リドル王子もそう思わんか!?わはは!」
「………」