第25章 全てを 超えて
人は、美しい。
ローズに対しても、常々感じていた事であったが…
どうして人は、こうも美しいのだろう。
マレウスの心はいつも、揺れ続ける。
どうして こうも、この儚い生き物達に心掴まれるのか…
彼は自問し続け、やがて1つの仮説に辿り着く。
「!そうか…
儚いからこそ 心動かされるのかもしれない な」
「?」
ずっと、人と歩み寄りたい。理解したいと努力してきたが、よもやそれは…土台無理な話だったのかもしれない。
だって、自分と彼らはこんなにも違うのだ。
美しく儚い この人という生き物と、自分はあまりにも違いすぎる。
やはり、共に生きていける道など…初めから なかったのだ。
どうして、愛しいローズと生きていけるなどという夢を見てしまったのだろうか。
柄にも無く、そんな幸せな夢を 思い描いてしまったのか…
「彼女をこれ以上待たせないでやってくれないか?」
俯くマレウスに声をかけたのはトレイ。はっとして顔を上げた。
そんな彼に、今度はデュースが歩み寄る。そしてしばらくマレウスの顔を、無言で睨み上げた後…
勢い良く、頭を下げた。
「頼む!!悔しいが…僕では、ローズを起こす事が出来なかった! だから、代わりに…ローズを救ってやってくれ!
彼女を救ってくれるんだったら、代わりに僕は何でもする!今はこうやって頭を下げる 情けない真似しか出来ないが、でもっ、」
「案ずるな、努力はしよう。
その為に、僕はここに来た」
マレウスは、頭を下げるデュースの横をすっと通り過ぎる。
そして、今まさにトレイが開かんとしているドアへ向かって、ゆっくりと歩みを進めるのだった。