第23章 呪われし姫の帰城
リドルが王に謁見している間、ローズはトレイとデュースに連れられて自室に到着していた。
道中、同じローブに身を包んだ3人は人目を忍んで移動した。こそこそと廊下を行くその姿を見た下女達は、あまりの怪しさに声をかけるのを躊躇した。
そうして、無事に部屋に辿り着く事が出来たのである。
部屋に着くなり、彼女は力無くベットに倒れ込んだ。横に向けられた顔は、やはり涙で濡れていた。すぅっと、綺麗な雫が横向きに流れる。
「…ローズ」
「俺達は、廊下に出てる。部屋から出してやる事は出来ないが、せめて1人でいるといい」
『……』
「何かあったら、すぐに呼べよ?僕は、扉の向こうにいるからな!側に、いるからな…」
『……』
まるで、声を失ってしまった 壊れた人形のよう。
ローズは、声を発さない。
自分達にはどうしようもないと悟った彼らは、後ろ髪を引かれる思いで部屋を後にした。
扉の左側にデュース。右側にトレイ。2人で扉を挟むようにして、壁に背を預ける。
いい加減にフードが煩わしくなり、バサッと後ろにはらう。もう無事にローズを部屋まで連れて来る事が出来たので、顔を隠す必要も無い。
2人の前を、バタバタ ガヤガヤと忙しそうに行き交う使用人達。どうしてこうも、彼らが忙しそうにしているのかは予想に容易い。
「パーティですか…。ローズが、あんな状態だってのに」
「パーティか…。さぞ凄いケーキが出るんだろうな。せっかくだから、勉強させてもらおうか。はは…」
「……トレイ先輩」
「ん?なんだ」
「無理して、笑わなくていいんですよ…」
「……」
2人の溜息が、喧騒の中消えていった。