第22章 真実の愛はディアボリック
ローズは 突き付けられた現実に耐え切れず、顔を両手で覆って2階へと駆け上がって行った。
その背中を見届けてから、リドルは雪崩れるようにして椅子に座る。そして、こめかみを押さえて溜息を1つ。
「…はぁ」
「え…っと、なんか、すんません。嫌われ役を買って出てもらって」
「言いたい事は、俺達も一緒なんだが…でも、あれだけはっきり言葉にするのは勇気がいるよな」
「言ったろう。ボクは、あの子にどれだけ憎まれても良い。だが、マレウスと引き合わせる事だけは許せない。
この命に代えても…絶対にローズを守ってみせる」
「……っ、僕も!同じ気持ちです!」
「俺もだよ。
あと3日…。気合い、入れないとな」
ローズは 自分のベットに倒れこんで、枕に顔を押し付けて泣いていた。
その細い肩を震わせながら、愛しい人を思い泣いていた。
嗚咽をこぼしながら 時折、彼の名前を口にした。
彼女は、今更ながら理解した。
2人でいる時、マレウスは頻繁に悲しそうな顔をしていた。笑っていても、心は泣いていたのだろう。大き過ぎる秘密を心の中に住まわせていたから。
どうして、気付いてあげられなかったのだろう。きっとサインは何度も出ていたはずだ。
それなのに、彼女は目の前にぶら下がった幸せに ただ満足した。本当のマレウスを見ようともしなかった。
自分さえ彼の葛藤を、分かってあげられていれば。結果は今と違ったものになっていたかもしれない。
ローズは、後悔した。
マレウスから貰った指輪を指でなぞる。
『会いたい…。マレウス、貴方に会って、話がしたい。
お願い。私に、会いに来て…』
しかし、マレウスの姿が現れる事は、なかった。
雨はやがて嵐となった。それは、これからの命運を暗示しているような荒れたものだった…