第3章 暗躍する確固たる悪意
場所は再び、オーロラとフロイドが対峙する城へと移る。
マレウスとリリアがこちらへ向かっているなどとはつゆ知らず。
アズールは撤収の合図を出していた。
撤収したオクタヴィネルの面々は、城近くの森の中に集結する手筈になっていたのだが。
1名のみ、集合場所に現れない。
「…フロイドは、なぜ戻らないのですか」
明らかにイラついた様子で、アズールは呟いた。
その呟きに答えるのは、ジェイドだ。
「アズール、すぐに僕が連れて来ますので…
貴方はここで待っていて下さい」
ジェイドはそう言い残すと。
黒装束に身を包む20人程のオクタヴィネル魔法士達を置いて、再び城内へと舞い戻るのだった。
地面に転がる兵士と。母。
膝をついたオーロラと。微笑むフロイド。
そして…粉々になったガーゴイル。
(お姫様の涙は…どんなかなぁ?
ほらほらー。早くオレに見せてよ。その顔をさぁ…!)
しかし…
オーロラは泣かない。
彼女は、滅多な事では泣かなかった。
可愛がっていたペットの小鳥が死んでしまった時も。
トイレの内鍵が壊れて、数時間閉じ込められた時も。
お気に入りのお人形を、ステファンが誤って踏み潰した時も。
彼女は唇を噛み締め、耐え。涙を流す事はなかった。
何が彼女をそうさせているのかは、両親にも本人にも分からなかった。
ただの性格からくる物なのか。
それとも
自分は王族なのだから。常に凛として強くあるべきだ。と
幼いながらに培った、彼女なりのアイデンディティかもしれない。
(……ちょうつまんねー)
フロイドが、心の中でそう呟いた
その時…。
事態はまた大きく動く。