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眠り姫の物語【ツイステ】

第21章 育まれる愛とフルムーン




『月がっ、綺麗よね…!こ、今夜は』

「!!」

『??』


ローズの方へ伸びてきていたマレウスの腕が、途中で不自然にピタリと止まる。

そして、彼の瞳は大きく見開かれた。綺麗に色付いた瞳孔が揺れる。

こんなふうに驚いたマレウスを初めて目の当たりしたローズは、自分が何か変な事を言ったのかと首を傾げた。


「ローズ…、その言葉の意味を理解した上で 言っているのか?この僕に」

『意味…?えっと、あまり詳しくはないのだけど、雨が降った日の月は、空気が澄んでるから綺麗に見える…とか?』

「……ふふ、いや、そういう意味で聞いたのではなかったのだが。
まぁ、いい」


マレウスは、ローズがその言葉に込められた本当の意味を知らないで放った事を理解した。そして愉快そうに笑った。
その後、伸ばしていた腕をゆっくりと下ろした。


「ローズ」

『は、はい』

「見ろ。月が、綺麗だ」

『え…』

「死んでもいいと、そう思えるくらいに。
月が綺麗だな。ローズ」


マレウスの言葉には、ただならぬ重みがあった。しかしローズには、彼の心は伝わらない。

彼は分かっていた。自分のこの想いが伝わらない事くらい。しかし、どうしても今伝えたかったのだ。

まるで 自分達の為だけに、空に浮かぶ月が織り成す、この美しい夜に。

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