第18章 穢れた海とマーメイド
『私は、あの人達の “ 怒りのぶつけ場所 ” でいなくちゃ駄目。謝る事で、自分の罪を軽くしたら駄目』
勿論、自分達人間が彼らを苦しめているのを目の当たりにして、自責の念が湧いてこないはずがない。
しかし、彼女が謝罪の言葉を口にしてしまえば、あの人達はそれを受け止めなければならないだろう。
当然のことながら、簡単に許してもらえるような単純な話ではない。しかし、心優しい彼らの事だ。きっと、真摯に謝る自分の姿を見てしまえば それ以上は責めなかったと思う。
『人間の代表として、彼らからの怒りを しっかりと受け止める』
見開かれた瞳から、目を逸らしてフロイドは呟く。
「そんなの…ちょーしんどいじゃん」
『私なら、いくらしんどくても良い。それが、無知だった私の罪滅ぼしだから。
それに、謝って彼らの体が良くなるんだったら、いくらでも謝るけど。そうじゃないでしょ。
私には、私にしか出来ない方法で、絶対にこの海を救ってみせる。絶対に、全員助ける。
謝罪するのは、その後よ』
「だ、そうですが?」
「…」
アズールとジェイドの2人は、今の会話を陰からしっかりと聞いていた。
「あれが 僕達が知っている、傲慢で冷徹な人間の言葉でしょうか?
アズール。僕は、彼女となら協力しても良いと考えています。
たしかにローズさんは、人間です。ですが、さきほどの少女も言っていたでしょう?
“ 全ての人間が、悪なのか否か ”
その答えを、貴方が自分で考えて出すべきです。
もう十分 見せてもらったと思いますよ。その答えを導くための、彼女の誠意、勇気、覚悟をね」