第1章 畏怖の念を抱かれし存在
ここは、とある世界のとある国。その名は、ディアソムニア。
独特な文化や伝説が残り、
中世の趣ある美しい街並みなど魅力的な国。
ただ一部分を除き、緑も多く
のどかで素晴らしい土地である。
他にも特筆すべき点がある。
この世界には、多くの妖精や魔法士などが当たり前に存在しているのだ。
その者達は、魔法や呪術などを巧みに操り。
人間達を正しい道に導いたり、はたまた困らせる事もしばしばあった。
そんな時代背景の中、姫・オーロラは誕生した。
ステファン王と、リア王妃の間に出来た待望の王女として。
その喜ばしい知らせは、ディアソムニア国内だけでなく
姫の許嫁であるフィリップ王子が在する、隣国オクタヴィネルや
同盟国であるハーツラビュルにも、時を移さず駆け巡った。
本日は、そんな待ち望まれた子。オーロラの生誕祭である。
その生誕祭は国をあげての盛大なパーティー。
国中の人が城に集まった為、街から人が消えてしまう程。
人々は、誰もが浮かれた調子で。
一張羅を身に纏い。今にも歌い出したり踊り出しそうな程に、姫の誕生を喜んだ。
王と王妃は
娘の誕生を、まるで自分の事のように喜んでくれる町民達に、感謝の気持ちいっぱいに見つめていた。
勿論、オーロラの許嫁であるフィリップ王子も出席していた。
また妖精の国からは、フローラ・フォーナ・メリーウェザー。三人の妖精もお祝いに駆け付けた。
そしてなんと…その場にはマレウス・ドラコニアと、その一番の家臣であるリリア・ヴァンルージュの姿もあった。
マレウスはこの国ディアソムニアの最端にある、茨の谷に城を構える
妖精族の末裔。
彼は、この国いちの…いや、世界屈指の魔法力を誇るとさえ言われている。
しかし、そんな彼の実態を知る者は皆無。
黒を基調と衣装や、その邪悪な見た目から “ 悪の頂点に君臨する者 ” との心像が一人歩きしていた。