第17章 迫り来るオクトパス
「ふぅん。それで?おめおめとキミだけで帰ってきたのかい?随分と良い度胸をしているね」
「おっかしいなぁ?オレ言ったじゃんねぇジェイド〜…2人で帰ってきてって」
ジリジリと、縛られているジェイドに詰め寄る2人。
「どうか、落ち着いて下さい。僕はたしかにローズさんと共に帰って来たはずですから、落ち着いて下さい」
どうやら、ローズよりも先に目覚めたジェイドがフロイドとリドルに責められている様子だ。
まだ目を覚まさない彼女を、彼が夢の世界に置き去りにしたと思われているのだろう。
しかし、実はローズは既に意識が戻っていた。だが目の前で繰り広げられている光景が少し面白くて、気配を殺して傍観しているのだった。
言い分を聞いてもらおうと慌てるジェイドなど、なかなか見られるものではない。
『ふふ、』
とうとう我慢出来ず、小さく笑い声を漏らしてしまう彼女に いち早く気が付いたのはジェイドだった。
「酷いですねぇ貴女は。起きていたのなら笑っていないで、まず僕を助けてくれても良いのでは?」
口では苦々しい物言いだったが、彼は内心ほっとしていた。自分とローズが二人揃って この世界に帰って来られたのだとやっと実感出来たから。
「ローズ!」
リドルは素早く身を彼女へ寄せた。
ほとんど無意識で、愛しい人を抱き締める。
「良かった。無事で…。ボクが付いていながら、怖い思いをさせてしまったね。
そうだ、怪我なんてしていないだろうね?気分はどう?顔色は悪くはないようだね。お腹は空いていないかい?」
『リドル、ありがとう。でも私なら大丈夫だから』
「ふふ…。まるでローズさんの母親のようですね。それも随分と過保護でいらっしゃる」
ジェイドは、大切そうにローズを抱き締めるリドルの背中を見て、さも愉快そうに笑う。
しかし、縛られたままでベッドに横たわった状態のジェイド。そんな情けない姿の彼に笑われても、リドルは全く意に介さないようだった。