第16章 運命とガラスの靴
ジェイドは、“ 運命 ” “予定調和 ” “神の見えざる手 ” そういった言葉が好きではなかった。
初めから定められている物事ほど、見ていて退屈なものは無い。人生何が起こるから分からないからこそ楽しいのでは無いか。
それが彼の持論だった。
「あぁ、それはご愁傷様でした。運命とやらの力も大した事は無いのですね。
ところであなたは、魔法で僕達を元の世界に戻す事は出来ませんか?」
「出来るわよ?だって私は魔法使いですからね」
そんなのは造作も無い。とでも言いたげな様子の魔法使い。
「素晴らしいですね、ぜひお願いしたいのですが」
『ちょっと待って』
ニコニコのジェイドに、ローズは待ったをかける。その瞬間 彼は、嫌な予感で押し潰されそうになった。
『…シンデレラは、どうなってしまうの?』
「さぁ…。このまま王子様と出会う事もなく、継母達にいじめられて過ごす日々を続けるのかも」
ちょっと失礼。と、ジェイドはローズの腕を引き寄せる。そして腰を折って背を屈めると、耳に口元を寄せる。
「お忘れですか?ここは現実では無いのですよ?誰かが見ている夢に過ぎないのです。言わば彼女達は、夢の中の登場キャラクター。無駄に感情移入する必要はないのでは」
言いたい事を全て言い終えると、掴んだ腕をそっと離す。するとローズは改めて魔法使いに向き直る。
『………私達がなんとかします!!』
「聞いていましたか僕の話」
どーんと胸を張って宣言してしまったローズを見て、ジェイドは激しい頭痛を覚えた。