第16章 運命とガラスの靴
『…ジェイド。私と貴方は、一連托生なんでしょう?じゃあ1人で帰るなんて、言わないわよね』
「………」
『お願いジェイド、手伝って』
さきほどまでは、帰る方法を探る事だけが彼の頭を支配していたが。帰れる糸口が見つかった以上、少し余裕が生まれていた。
それならば…
「勿論ですよ。2人でシンデレラさんを助けてあげましょう」
(近くで彼女を観察するのも、また一興…)
『ありがとうジェイド!私達がシンデレラの代わりに舞踏会へ出向いて、必ず彼女達を引き合わせてあげましょう!』
2人の意見がまとまる瞬間を見届けた魔法使いは、歓喜の声を上げる。
「助かるわあ!うふふっ、そうと決まれば私の出番ね」
彼女はくるくると杖を振り回す。
先端からキラキラとした光が溢れ、畑にあったカボチャを包む。
すると、何の変哲も無かったカボチャは むくむくとその体積を増し何と豪華絢爛な馬車へと変貌を遂げた。
『っわぁ!!凄い』
それだけでは終わらない。魔法使いの足元に現れた小さなネズミ達の上にも魔法の力が降り注ぐ。
するとあっという間に、豪華な服を身に纏った雰囲気のある御者へと早変わり。そして、馬車には欠かせない立派な馬も2頭出現。美しいシルクのようなタテガミなびかせた。
「これは…なんという素晴らしい…」
魔法が使えるジェイドも、思わず感嘆の声を漏らした。
「さぁ、仕上げは…!」
ついにその魔法は、ローズとジェイドに向けられる。
光の粒が、見る見るうちに2人を包み。その洋装を変化させていく。
ローズは、かつて城で着ていたような煌びやかなドレス姿に。ジェイドには、ブラックを基調としたドレッシーなデザインのスーツがあてがわれた。