第15章 忍び寄る海のギャング
そう言った おばさまは、杖を一振りする。すると花壇に植えられた植物の蕾が、見る見るうちに色取り取りの花を咲かせた。
「なるほど…。僕達の世界でいうところの、妖精に近い方なのかもしれませんね」
『その魔法使いの妖精さんが、何をお困りなんですか?』
「あら聞いてくれるの?優しいわねぇ。実は…」
魔法使いは、家の頂上付近を見上げて語り出した。
「この家にはね、ある心の優しい女の子が住んでいて…。その子は意地悪な継母達に日々いじめられているのだけれど、凄く前向きで 日々を楽しく過ごしているわ」
『まぁ!いじめるだなんて酷い!』
「それで実は今日ね、お城で舞踏会があるのよ。私は日々のご褒美に、その子を素敵な舞踏会に送り出してあげようと思って、ここへやって来たの」
ローズとジェイドは、ふむふむと話を聞いている。今のところ、何も困るような事件は起きていない。
「それなのに…、その子が よりによって今日、足を怪我してしまったのよ。
それじゃせっかくの舞踏会に行けないのよね。歩く事もままならないのだから」
意気揚々と話していた魔法使いの首が、ガックリとうなだれる。
『なんて可哀想…』
「魔法で怪我を治してさしあげては?」
ジェイドの何気ない一言に、魔法使いはブンブンの首を横に振る。
「魔法は万能じゃないのよ!?
怪我を癒す、人の心を変える、時を止める。この3つは絶対にやってはいけないと決められてるんだから!」
それが、この世界のルールなのだろう。2人は素直に受け止めた。
「本当なら、今日 王子様と運命の恋に落ちるはずだったのに…。
あぁ!なんて可哀想なの
シンデレラ…っ」