第14章 我儘になりたいクイーン
———ある日のハーツラビュル城
謁見の間。
「では…女王陛下は、同盟国であるディアソムニア国の姫君を お見捨てになれ。と仰るのですか」
リドルは、母と対峙していた。
自分の母親と話をするだけだというのに
わざわざ約束を取り付けたり、母を女王陛下と呼んだり、片膝をついて 姿勢を低くしなければいけない。
なぜなら、それこそがこの国の 法律だから。
彼の頭の上に、母の冷たい声が降る。
「そうは言っていない。わざわざ 王子である貴方がそこまでしてやる義理は無い。そう言いたいのです」
「ノブレスオブリージュ(持ち得る者の義務)
ボクはこの教えを胸に、今まで弱き者に手を差し伸べてきましたが…。
女王陛下は、この国の尊き教えを黙殺されると…そういう事なのでしょうか」
冷静だった女王の表情と声に、怒気が含まれた。
「だから…トレイとデュースに任せれば良い事でしょう」
「ですが!」
「お黙り!これ以上の反論は狼藉とみなして首を跳ねますよ!!」
リドルが異議を唱える間など与えず、女王は彼を容赦なく威圧する。
「……っ、」
彼が何も言えなくなったのを見て、満足そうに女王は微笑む。
「そうですリドル…それで良いのです。
貴方が、私に発しても良い言葉は これだけ…
“ はい。 女王陛下 ” 」
息苦しい空気が、彼を包む。まるでリドルの周りだけ 酸素が薄くなってしまったよう。
「…はい。女王…陛下」