第12章 貴女の心が欲しいスペード
デュースは、ポケットからネックレスを取り出して。彼女の目の前にぶら下げる。
『!、そのネックレスは…』
ローズはそれを見た時、一瞬大きく目を見開いた。しかしそんな様子にデュースは気付いていない。
彼は自問自答を脳内で繰り返す事で手一杯だった。
本当にこれを、彼女に渡してしまっても良いのかと。
こんな物の力で、ローズの心を手に入れて良いものかと。
「……これを、どうしても ローズにプレゼントしたいんだ。
貰って、くれるか?」
彼は、覚悟を決めた。
最低に成り下がったとしても、外道に成り下がったとしても。
(…俺は、貴女の心が欲しい)
『……ありがとう。嬉しい。じゃあデュースがつけてくれる?』
そう言って、くるりと彼に背を向けた。そして後ろ髪を 器用に手でまとめ上げる。
「…分かった///」
露わになったうなじに、思わずデュースは目を奪われたが。すぐにネックレスの金具を外す。
緊張で軽く震える手を、なんとか抑えて。ネックレストップをローズの前側へ落とす。
後は、後ろで金具を留めるだけだ。
しかし、また手が震えて来る。自分の事を情け無いと思いつつも、女性にネックレスを付ける経験などした事がないのだ。
こうなってしまうのも仕方がない、と自分をなんとか落ち付けようとした。
「わ、悪い。ちょっと待ってくれ、すぐに」
すぐにつけるから。そう言おうとした時、ふいにローズが口を開いた。
『デュース…、あのね。私の気のせいなら良いんだけど…
もしかして何か、悩んでいる事とか、迷っている事が、ある?』
「え、」
思わず、ネックレスを手放しそうになってしまった。