第11章 菓子より甘いはクローバー
ローズは、得体の知れない呪いに その身を蝕まれても。
突然 親元や婚約者から離れる事になっても。
決して涙を流したり、弱音を吐いたりしなかった。
そんな彼女を見て、3人は裏で話していた。
ローズは強い女の子だ。さすがディアソムニアの次期王女だ。と。
しかし、それは彼等の見当違いだった。すぐに自分達の間違いを思い知る事になる。
ローズが寝静まった事を確認したトレイは、自らも床に着く。
しかし人の気配を感じ、飛び起きた。そしてすぐに彼女のベットを確認しに行くと…。
そこにローズの姿はなかった。しかしベットはまだ温かい。
おそらくは彼女が1人で外に出てしまったのであろう。
どうして、こんな時間に外へ…。思う所はたくさんあったものの、とにかくローズを1人のままにしておくのは得策ではない。
すぐに彼は後を追った。
トレイは、思いもしなかったのである。
気丈な彼女が、1人夜の森で、声を上げて泣いているなんて。
木の幹に頭を押し付けて、ぽろぽろと涙を流す彼女を見て
トレイは自分の愚かさに気が付いた。
死の宣告をされて、怖くない子供がどこにいようか。
親や恋人が恋しくない人間など、どこにいようか。
自分が、心の底から情けなかった。
ローズは、自分達に心配をかけまいと気丈に振る舞っていただけに過ぎなかったのだ。
それに、気付こうともしなかった自分が腹立たしい。
ヒントは出されていたはずなのに。
ローズは、両親からもらった 御守りの短剣を肌身離さず持ち続けている。縋るように…
よく笑う彼女であるが。時折見せる、笑顔の奥に隠れた憂い。本当の感情を隠すように…
サインは、絶対に出されていたはずなのに!