第8章 なんでもある日のパーティ
こうして、楽しいパーティはいよいよ終わりへと近づいて行った。
ローズにとっては、貴重で初めての体験だった。
子供だけで開くお茶会も、仲の良い友達が出来たのも。
『…ふぅ、楽しかった…』
一息ついた彼女は、ふと思い出した。昨日の夜までここにいた、もう1人の人物の事を。
『フロイドは、昨日の夜に帰ってしまったのね。
彼もここにいたら、きっともっと楽しかったでしょうね』
彼女はソーサーに カップを静かに置いた。
すると、カチャンと僅かに寂しい音がした。
「…フロイドは、オクタヴィネルに帰ると言ってたな。昨日の夜中にここを経ったぞ」
どことなく寂しそうなローズに、トレイが教えてやる。
『そう…』
もう彼とは会えないのだろうか。そう思うと、彼女は胸の奥に隙間風が通ったような心地になった。
ローズは分かっている。この気持ちは “ 寂しい ” だ。
彼女の中で、フロイドは友達になってしまっていた。
フィリップに忠告されていたのに。フロイドには、気を許すなと。
「…あまりこんな事は言いたくないけど、ローズ。
彼には、あまり気を許さない方がいい」
リドルは伏し目がちに告げた。
『うん。分かってる、つもりなんだけれどね…』
リドルは、自分の為を思って言ってくれている。そんな事くらい、彼女には簡単に分かった。
しかし、やはり少しだけ悲しい気持ちになった。
「そ、そうだぞ!なんか奴は…胡散臭い!
何考えてるか、よく分からないし…」
『デュースは、フロイドが嫌い?」
面と向かってそう問われると、答えに困ってしまう。
「いや…嫌い、というか…。苦手?
胡散臭いし、不思議な奴だけど…。完全に悪い奴では、ないと思う」
彼女は、デュースが自分と同じ考えを持っている事に安堵した。
『そうよね。きっとフロイドは…少し、自分に正直なだけ。
私、自信があるの!彼はきっと、私を裏切ったりしないわ!』
その全く根拠の無い予想が、的中するかしないか…
彼等が知る事が出来るのは これから数年後のお話。