第2章 学生編・prologue
世界は雑音(ノイズ)で溢れている。
学校に行けばひたすら机に向かってノートに鉛筆を走らせる音。まるで機械の様に永遠と喋る教師の声。黒板を走るチョークが折れる音。休み時間になれば勉強や教師に対する粗悪な陰口。品の無い笑い声。
街を歩けば淀んだ空気。車の走行音や飛び交う機械音。行き交う人々の足音。聞こえてくる会話も何が楽しくて笑っているのかも分からなくて、ただただ邪魔な雑音。
-さあぁぁあぁ…-
ふと足を止めると吹き抜けた風が木の葉を拐う。
じんわりと滲む汗。まるで命を燃やすかの様に精一杯鳴き叫ぶ蝉。あぁもう鬱陶しい。早く涼みたい。そう少し苛立ちながら近道をする為に公園を突っ切ようと思案する。一々出入口まで行くのは面倒だからフェンスを飛び越える事にした。
-たっ-
-ふわ…-
助走を付けて踏み込んで飛んでフェンスの上の部分に手をかけて、その勢いと腕力に任せて側転する様に飛び越える。
「…」
『!』
丁度真下にあるベンチにしんどそうに横たわって休んでいた人と目が合う。とても吸い込まれそうな目をしていた………と、このままじゃ着地した時の撒き上がる砂をぶっかける事になる。ぐっとフェンスを掴む手に力を込めてフェンスを押す。
-ガシャン-
-すたっ-
よし、成功。
そのまま帰路につけばいいものの…何となく目が合った人が気になってベンチの方を振り返って見ると、とても顔面蒼白だった。
『あ…あの…大丈夫ですか?』
「うーん………」
声をかけても唸るだけ。恐らく軽い熱中症だろう。でもこのまま放っておくのは駄目だと思うから何か…と考えたところで携帯が鳴る。
-ピッ-
『もしもし?………え?今から!?え、ちょっと待って…えっあっ…』
-ブツッ-
要件を言うだけ言って此方の都合も聞かず一方的に切られてしまう。取り敢えず、この人を…と周りを見ても誰も居ない。
『あー!もー!』
夕方の人気の無い公園にアタシの苛立たしい声が響き渡った。
→To Be Continued,