第1章 もっと。
「小エビちゃーん」
あぁ、見つかってしまった。1番見つかりたくない人物に。
ドキッとした気持ちを押し殺し、最大限の笑顔で振り向くと、私のことを"小エビちゃん"と呼ぶ人物に抱きつかれる。
苦しい…
見上げるほど大きな…ガタイがいいというよりは手足が長くてひょろっとしている彼、フロイド先輩に目をつけられ…あ、気に入られ、今に至る。
「フロイド、そろそろ離しておあげなさい。監督生さん、すみませんね。」
「え〜なんで〜」
「フロイドの中で潰れてしまいますよ。」
「なんだよつまんねぇの」
フロイド先輩の後からやってきたのがジェイド先輩。フロイド先輩とは双子の兄弟で顔は似ているが、どちらかと言えば物腰は柔らかい方、…どちらかと言えば。
フロイド先輩は私を抱き 絞 め る 腕を緩めると、頭の上に顎を乗せ、カチカチとギザギザの歯を鳴らした。獰猛なウツボに捕食されるのではないかと体は震えてしまう。
「何震えてんの小エビちゃん…?」
「ぃ、いえっ…」
頭上からの圧に体は硬直してしまう。
「フロイド、ラウンジでアズールが呼んでいますよ。またつまみ食いをしたようですね。」
「えー、俺じゃないし…」
「貴方のシャツに本日のデザートに使うはずだったストロベリーのシロップがついていますが?」
「あーもう、ちょっとぐらいいいじゃん…」
2人は私を挟んだままやり取りをしているので顔は見えない。声色からして、フロイド先輩は機嫌がよろしくないようだ…(自分が悪いのに…。)
「ぃ、いちごのデザートがあるん…ですか?私も今度…食べに行っても…いいですか??」