第1章 もっと。
「私は…ジェイド先輩の事が…好きです…」
そう言われた瞬間、泣きじゃくる彼女を腕の中に収めていた。小さく震えながら泣く彼女の頭をそっと撫で、「そうですか。」と言った。
誠実な彼女が信じられなかったわけではない。ただ、自分が想像以上に不安に押しつぶされていただけのこと。それが彼女の“好きです”という一言で救われたような気がした。
「僕も好きですよ。」
「ジェイド先輩…全部、知っていたんですか…?」
「えぇ、フロイドが僕たちを想って提案したんですよ。まさかそんな事をするとは思いませんでしたが…。怖い思いをさせてしまいましたね。」
「私も…拒否、できなくて…」
「ふふ。では、そろそろ対価を頂くとしましょうか。」
そう言って彼女の小さな唇に自分の唇を重ねる。触れている面積は少ないが確かに感じる熱は心地よい。
「んっ…ふ…ぁ…」
唇の隙間から漏れる甘い声に蕩けてしまいそうだ。頬を伝う涙を口にすると確かに海の味がした。
「監督生さん、お代は確かに頂戴致しました。」
「へ…?」
ぽかんとする彼女を見て、足りませんか?と言うと慌てて首を横に振る姿が可愛らしい。でも、少し意地悪をしてもいいですよね。
「本当は…?」
「もっと…」
もうとっくに魔法は解けているんですけどね。