第1章 もっと。
翌日。
「どこに行っちゃったかな〜私のテキスト…。」
昨日教室に取りに戻ったテキストを帰り道に落としてしまったようで探しながら歩く。困ったな、今日魔法史の授業あるのに…。昨日といえば色々あって、フロイド先輩にあんなことをされ、ジェイド先輩にも顔を合わせる事が気まずいなと思った私は、いつもより早く登校することにした。テキストも探さないとだし。
「監督生ー、朝っぱらから何やってんの?」
「あ、エースおはよ。昨日の帰り道、テキストを落としちゃったみたいで探してるの、魔法史の。」
「ドンくせーな、一緒に探してやるよ。」
「エース〜!ありがとう!」
「その代わり、食堂のチェリーパイな!」
「その必要はありませんよ。おはようございます、監督生さん。」
後ろを振り返るとジェイド先輩が私の探し求めていたテキストを持って立っていた。
「えっなんでそれをっ…あ、おはようございますっ」
「ふふ、貴方が昨日モストロラウンジに置き忘れていたようだったのでお持ちしました。これがないと、困るかと思いまして。」
「助かります、ありがとうございますっ」
ペコっと会釈をして受け取ろうとすると、テキストを持った手は先輩の方へ引かれ、それから、「対価が必要ですね。」と付け加えた。
その対価というのは、放課後に伝えるということで、授業の後に林檎の木の下で待ち合わせをし、授業へと向かった。
「うわー大丈夫なのかよ監督生、イソギンチャクにされんじゃね?」
あれはしんどかったわ〜と頭の後ろで腕を組み話すエースを横目に、それはないと思うけど、と言って対価について考えていた。てっきり、帰り道で落としたと思っていたが、ジェイド先輩が持っていてくれて本当に助かった。
ふとジェイド先輩の言葉を思い出す。
「エース!このテキストはどこにあったって言ってた?!」
額に汗がにじむ。
「ん?どこって、モストロラウンジだろ?オクタヴィネルの。」
「私…昨日モストロラウンジ…行ってない…。」