第1章 もっと。
「おーい!監督生ー!一体どこへ行ったんだゾ?」
「おやおやグリムさん。監督生さんをお探しですか?」
山から戻ると彼女を探す1匹の狸…グリムさんに会った。
「そうなんだゾ!忘れ物を取りに戻ってからまだ帰ってこないんだ、お前知ってるか?」
「監督生さんなら、モストロラウンジへ新作のデザートを食べにいらしていますよ。グリムさんもいかがですか?」
「なんだと!自分だけうまそうなもんを食ってるなんてずるいんだゾ!」
彼女の居場所を伝え、鏡の間へ差し掛かると、オクタヴィネル寮へ続く鏡から、彼女が戻って来た所だった。声を掛けるとビクッと肩を震わせこちらを見ようとせず、グリムさんと話をしている。泣いたのか目元が赤い。
「目が赤いようですが…」と、手を伸ばすと顔を背けられてしまう。彼女はまたこちらを見て笑うと、「花粉症で困ってるんです。」と言った。僕を心配させないように。
2人を見送り、息つく間ももなくモストロラウンジの開店準備に取り掛かった。話している暇もないぐらい今日は盛況だった。新作のデザートも好評でアズールも満足そうだ。
やっと営業が終わり自室へ戻ると、フロイドに「うまくやったから〜」と言われた。
「うまくやった」というのは、フロイドが「俺が小エビちゃんのことイジメるから、その後ジェイドが慰めてやれば?俺あったまい〜」と、彼女の心をこちらへ向ける計画を立てたのです。
「小エビちゃんさ〜泣いちゃったんだよね。小エビちゃんの涙、海の味がしたから今度ジェイドも舐めてみなよ♡」
「えぇ、そうですね。今日は疲れてしまったので先に休みます。電気、消してくださいね。おやすみ、フロイド。」
そう言って布団に潜るとこの布団にはフロイドと彼女の匂いが染みついていてなかなか眠る事ができなかった。
どうしてウツボは鼻がいいんでしょうね。