第6章 心が迷うたび、君の元へ。【月島】
ー玄関を開けるたび、私は明治へ帰る。ー
「また来たのか」
夜、机で書類を読んでいた月島さんと目が合う。
私は沈んだ気持ちで自宅の玄関を開けたはずだった。
けれどそういう時、何故か月島さんの近くと繋がってしまう。
コンビニで買ってきた夕飯の入った袋をぎゅっと掴み、居た堪れない気持ちになってしまう。
でも、どこかでホッとしたような自分もいるのが嫌だった。
「・・・今日は顔色が悪いな」
こう何度も会っていては彼も驚くことはなくなっていき、今は呆れともちょっと違う、温かいものを感じる声で私を迎えてくれた。
「しんどい」
ぽつりと消え入りそうな、カスカスの声で呟く。
「・・・今日はもう十分だ」
月島はそう静かに言って、目の前の椅子を引き、お茶を一杯差し出した。
私はすすめられた椅子に、ゆっくりと腰掛ける。
「今すぐ答えを出す必要はない。まずは休みなさい」
「・・・はい」
責めることも、根性論を言うこともなく、ただ「今日は生き延びればいい」と優しい眼差しを向けられる。
その気持ちに当てられ、ポロポロと勝手に涙が出てきた。
「・・・話せるなら話せばいい」
少し間を置いてから、「話したくないなら、それでも構わない」と付け足した。
「今日は、よく耐えたな。耐えた人間に必要なのは反省ではなく、休息だ」
月島は和栗の隣に席を移動させて座った。
「・・・月島さん、ここで、夕飯食べて行ってもいいですか?」
「ああ、構わない」
もう彼は何度も見るビニール袋。
母のように「またこんなの食べて」と言われることもない。
いつも何を買ってくるか、しげしげと見るだけ。
涙が出て何度か食べる手が止まったが、それでも口に押し込むように食べた。
彼は横で書類を読んでいる。
静かな夜だ。
しばらくして、私は小さい声を出す。
「・・・・ごめんなさい」
月島は顔を上げた。
「何がだ」
「迷惑かけて・・・」
月島は少し考えるそぶりをした後、「俺は迷惑だと言ったか?」と言う。
「・・・・」
「あなたが勝手にそう思っているだけだろう」
また書類に視線を落とす。
「今日は何も考えなくて良い。明日のあなたが考えればいい」
「ふふ、何それ」
思わず少しだけ笑みがこぼれた。
「あの、ね、今日とっておきのデザートを持ってきたんです」
「でざあと?」
