第57章 光秀の閨房指南
ーぐっちゅうぅ!
「いやぁぁぁ…!」
結局、明け方近くまで俺の熱が収まることはなく、散々に抱かれ、溢れんばかりに白濁を注ぎ込まれた朱里は、最後には意識を飛ばして褥に沈むことになった。
身体中が怠い、泥のように重い。
特に腰が重怠く、頭も、あれだけ放出したというのに、すっきりしない。
色々と考えることさえも億劫になった俺は、倒れ込むようにして重い身体を褥に横たえる。
(……褥もひどい有り様だが…朱里が起きたら、どんな顔をするやら…)
腕を伸ばした拍子に、カシャンっと手に何かが当たる。
見ると、褥の側に小さな容器が落ちている。
取り上げて、寝転んだままで蓋を開けてみると、ねっとりとした薄紅色の練り香水が入っている。
ほんのりと上品な桜のような香りが鼻腔を擽る。
(見た目は、どこにでもあるありふれた練り香水のようだが…まさか、あれ程の効きめの媚薬とはな…朱里がこのようなものを使うなど……ふっ…本当にこやつは俺の予想を超えてくる)
隣に横たわる朱里に視線を向けると、くったりと脱力したように褥に身を預け、すぅすぅと可愛らしい寝息を立てている。
この様子では、陽が高くなっても起きれぬかもしれない。
(くっ…愛らしい顔を見せおって…俺をあんなにも乱れさせるのは貴様だけだぞ?)
キラキラと妖しく煌めく螺鈿細工の蓋を閉め直し、手の内で弄ぶ。
「朱里、これは俺が預かっておこう…次は貴様が乱れてみせよ」
穏やかに眠る朱里の額にそっと唇を寄せる。
(愛してる…何度言っても言い足りないほどに……朱里、貴様を愛してる)