第22章 心の棘
翌朝
まだ夜が明け切らぬ内に目が覚める。
昨夜は一度果てた後も、飽きることなく何度も朱里を求めてしまい、漸くその身を離したのは、つい数刻前のことだった。
すやすやと穏やかな寝息を立てながら隣で眠る、この世で一番愛しい女を見る。
乱れて顔に落ちかかる髪を直し、起こさぬようにそっと耳にかけてやっていると、首筋に咲く紅い華が目に留まる。
昨夜、己がつけた所有の痕
常よりも強く刻んだせいで、紅黒くなり、少々痛々しい。
わざと髪で隠れぬ目立つ処に残した
(また秀吉に叱言を言われるな)
離れている間も俺を忘れられぬように、と昨夜はいつも以上に激しく責め立ててしまった。
朱里を残して上洛することに言い知れぬ不安を感じて、それを振り払うかのように、己の全てを朱里の身体に刻んだ。
戦場へ向かう時ですら、このような不安を感じたことはないのに。
離れることが何故か無性に恐ろしい。
たかが上洛。
官位の件も縁談の件も、上手く収めてすぐに帰ってきてやる。
身体中に遺した痕が消える前に………