第4章 ズルい人。
すらりと長い指を1本1本確かめるようになぞって、握る。親指が終われば人差し指に、その次は中指に、というふうに。
私が普段から使っている女性向けのハンドクリームを丁寧に塗り込んで、最後は指と指を絡ませて手を握り込む。所謂、恋人繋ぎというやつで。
イギリスさんの手はいつも暖かいけれど水分がない。国の擬人、つまりは雨の降る街の擬人であるはずの彼の手はいつだって温もりがあるだけで、あの天気のようなじっとりとした重さはない。
それでも、あのさらさらとした手は、気を抜けばするりと指の隙間から零れ落ちてしまいそうな、そんな気がする。
そんなところが、どこかへふっと消えてしまいそうな彼らしいとも言えるけれど。
そんなことがないように、離しませんよという意思表示を込めて、私はより一層相手の手を握る力を強める。そのまま軽く手にキス。