第5章 パーティの夜※
「やあ、これはこれは美しいお嬢さんだ。ルカくん、いつの間にこんなご婦人を?」
「ルカ、今回のメインに使っているワイン、凄く良かったよ」
「ありがとう」
煌びやかな明かりの下で、ツルツルする床の上を人が行き交う。
誰もがお洒落をしていてきらきら光る広間に彩りを添えている。歩くそばから色々なヒト型に声を掛けられ笑顔で応対するルカさん。
聞いていた通り、彼はここでは顔見知りが多いらしい。
『ルカさん』
「お前が欲しがっていたアダンの実の事だけど、俺の所のルートで仕入れられるよ」
『ルカさん』
「本当か?ケリー、どこの産地のもの?」
ルカさんと同い歳程の若い男性。二人は私の知らない話に夢中になっている。
ここのレストランに来たのは仕事の関係だとは言っていたけど私、こんなの聞いてない。
『ルカさん、私お腹が空きました』
「お嬢さん、良ければ何か料理を取ってこようか? それとも一緒に」
「えっ、ホントで」
「すみません、この子少食なんですよ」
ご飯に誘ってくれた人に付いていこうとするとルカさんにぐいと手を引かれた。
もちろん私は少食ではない。
そして壁沿いに所狭しと並ぶ色とりどりのお料理をまだ一度も見に行っていない。
『もう少し待ってね』
『足が痛いです』
『仕方無いなあ』
むくれる私をなだめてくる。
だってさっきから私は立ちっぱなし。しかも履きなれない踵の高い靴でつんのめりそうになるのをルカさんの腕にしがみつきながら耐えている。