第3章 一人目 案内人ルカ
隙間を探るように入り込み、それが途中で曲がって指先が擦る場所を変える。
その度に上ずった声が私の喉から漏れた。
それは息苦しくて、つんと痺れて。つつと触れられて肌が溶けて薄く削られていくみたいに。
そしてひりひりとした痛みに似た、後に引きずられる余韻の痕。
「トロトロでリラちゃん凄く美味しそ」
そうとても小さく低い彼の声をうなじの辺りで囁かれて背筋がぞわりとした。でも、先ほどの体が竦むほどの恐怖感とは違う。
ルカさんが指の数をまた一本と増やしていき、数度軽く私のその部分の肌を指で挟んだ。びくん、と背中が震えが走る。
「や、めっ…やだ、あ、…」
どうしよう。凄く熱くって…もどかしい、ような。
「足りない?」
「…たり…? いっ…え。そこ、は…つら、くて」
「……なるほど」
どこか興味深そうな声。
それと共に触れていた箇所から彼が離れ、私の心音と呼吸が少しずつまともになってきた。
「は……」
「ホントに辛そうだしここまでね」
そしてどこか悪戯っぽい声音を私に寄せ、不意打ちのように私のこめかみの辺りに、柔らかく薄い唇が押し付けられた。
「っあ、」
後ろから私の脇と膝の裏に手を差込んだかと思うと、横に抱き掬ってルカさんが腰を上げた。
視界が一気に高くなり落ちるかと思い慌てて彼の首にしがみつくと大丈夫だよと笑う。
「ちょっ……きゃあ!!」
それなのに私を抱えたまま、勢いよく浴槽に体を沈ませるものだから、当然ながらざぱっと大量に溢れてしまうお湯。
ルカさんより低い位置にいたために、顔面にしこたまお湯を浴びた私は思わずブハゲホゲボと激しくむせた。
「はははっ!」
「ルカさん!? も、もうっ!!」
鼻に水が入り半泣きで咳き込む私を盛大に笑い飛ばしている。
苦しいし、さっきから訳が分からない。
「やっと止まったみたいだね。ここに来てからずっと震えてたから」
優しげな青灰色の瞳を細めてそんな事を言うルカさん。
ずっと? ……そう言われてみれば、緊張して凝り固まっていた体が今は楽になっている。
「え、ああ……あ、の? じゃあさっきの…」
火照った自分の顔をきつく両手で包む。
そりゃあ緊張も解けてお湯は気持ちいいけど。