第7章 リラの療養※
「だから、僕以外、なにも考えられなくなる位には思い知らせてやりたいなあって?」
そしてルカさんはまた思い出したのか、くくっと笑いを堪えた。
「しかしさっきの堪んなかったな。リラちゃんが泣いちゃって『嫌いになったの?』って辺り」
「えっ、……や、あれはつい必死で!」
彼は少し目を細め、手を振って焦っている私をしばらく眺めている。
その様子がいつも以上にとても静かで、ルカさん?と名前を呼ぶと何も言わずに、私を腕に収め自分の指を私の前で組んだ。
「出来るならもう、心配掛けないでくれると嬉しいんだけどね」
そう言って私の髪に顔を寄せる。
「はい……ごめんなさい」
「今度やったらもっと色々意地悪な事するから」
「そ、それは嫌です」
ふざけたようにぐりぐりと頭に押し付けられたルカさんの顎が痛くて離れようと暴れると、その腕にぐっと力がこもった。
「いた、痛い、頭」
「……そうやって、きみをな…すのも……せるのも」
ついでにでも、あんなのはダメですからね!と釘を刺しておく。
体もだけど、何より私の心臓が持たなそうな気がする。
……とはいえ、ああされて霞がかかっていた様な自分の気持ちが晴れたのは何故だろう?
「え? 今、何か言いました?」
「……何でもない」
僕にだけならいいんだけどね、ルカさんはそんな事を呟いた。
そしてこの体にも…今は嫌悪感は無い。
ただ、激しく求められたから?
私の右肩と彼の指に滲んだお互いの跡に目をやり、また思い出してしまって慌ててそれを逸らした。
「どうしたの? 赤い顔して」
「な、んでも…ないです」
これもこちらの考えを分かっているのかいないのか、私の顔を覗き込んでいたルカさんはふふ、と小さく声を漏らす。
話しているうちに、周囲が大分明るくなってきた。
窓に切り取られた空が紫色から赤、仕舞いに輝く金色に覆われるまで、そうして長い間、ぼんやりと二人で朝焼けを眺めていた。