第3章 傀儡-KAIRAI-【イケメン戦国】
其れからと言うもの、は宣言通り常に俺の傍で生きた。
俺の背後では無く隣にすくと立って、俺と同じ方向を見据え力強く生き抜いた。
豊臣秀吉に崇拝され、明智光秀には一目置かれ……
そうであるのに政宗や三成とは気さくに語り、ころころと良く笑い合う。
あれ程に面倒臭い天邪鬼の家康ですらもには素直に心を開いている様を見せ始めれば、本当に此の女には敵わないと痛感したものだ。
然し其の女は、日が落ちれば俺の腕の中で健気に愛らしく……
そして淫らに悦がり啼いては俺を耽溺させる。
正しく俺が娶ったのは《三国一の奥》であった。
そして現在、天正十年水無月。
……
いざ《此の時》に為ってみると、更に貴様が大切で愛おしくて仕方無い。
善くぞ最後の最期迄、俺と共に歩んでくれた。
貴様の傀儡である俺は、貴様が居なければ動けぬのだ。
さすれば、俺も貴様と………。
未だ温かいの身体を横抱きにし、もう開かない瞼ともう俺の名を呼ぶ事も無い唇へ口付ける。
「さあ……。
此の先へも共に逝くぞ。」
そう独り言ちてから、を抱えた俺は………
燃え盛る炎に向かって足を踏み出した。
了